「親の田舎の家を相続したけれど、住む予定はない」
「相続放棄すれば全部解決すると思っていたけれど、本当にそれでいいのかわからない」
田舎の古い家は、持っているだけでも固定資産税や管理費がかかります。かといって、解体にもまとまった費用が必要です。
この記事では、相続放棄・維持・解体・売却の4つの選択肢を費用面から比較し、どの選択が現実的かを整理します。
なお、相続放棄・登記・税金の判断は個別事情で変わります。この記事では費用感と考え方を整理しますが、実際の手続きは司法書士・弁護士・税理士などの専門家に確認してください。

ケアマネジャーをしていると、親御さんが亡くなったあと、田舎の実家が残ってしまった、どうしたら良いのかな?と相談を受け、一緒に考えることもありました。
相続した田舎の家、4つの選択肢と費用比較
まず、気になる費用の全体像を見てみましょう。

| 選択肢 | 初期費用の目安 | 年間維持費の目安 | 向いているケース |
|---|---|---|---|
| ①相続放棄 | 自分で手続き:数千円〜、専門家依頼:3〜8万円 | 原則0円。ただし占有・清算人申立てで費用が残る場合あり | 借金も多い・家に価値がない |
| ②維持する | ほぼ0円 | 20〜50万円(固定資産税・管理費・インフラ費用等により変動) | 将来売れる可能性がある |
| ③解体する | 150〜300万円+残置物処分費 | 3〜10万円(土地のみ) | 更地にして売りたい・近隣への配慮 |
| ④売却する | 5〜20万円(登記費用等) | 売れれば0円 | 買い手がいる地域・土地や立地に需要がある |
一見「相続放棄がいちばん安そう」に見えますが、放棄には費用面だけでなく法的な条件や制約もあります。順番に見ていきます。
① 相続放棄する場合の費用と注意点
費用の目安
| 項目 | 費用の目安 |
|---|---|
| 家庭裁判所への申立費用(印紙・切手) | 1,000円前後 |
| 弁護士・司法書士への依頼料(任意) | 3〜8万円 |
| 相続財産清算人の予納金(該当する場合) | 10〜100万円 |
書類を自分で準備できれば、申立費用だけで済みます。ただし「相続財産清算人の予納金」については後述します。
2023年民法改正で管理責任はどう変わった?
2023年4月の民法改正により、相続放棄後の管理責任の範囲が整理されました。
現在のルールでは、相続放棄した時点で相続財産に属する家や土地を「現に占有している人」は、相続人や相続財産清算人に引き渡すまで、その財産を保存する義務を負います。
一方で、もともとその家に住んでおらず、鍵も管理もしていない相続人まで、一律に管理責任を負うわけではありません。ただし、個別事情で判断が変わるため、不安がある場合は司法書士や弁護士に確認してください。
また、放棄後に誰も相続人がいない場合は、相続財産清算人の選任申立てが必要になることがあり、その予納金として10万〜100万円程度かかるケースもあります。

住んでなかったし、要らないけど、他に誰も頼れる人がいない時は、やっぱりお金を払って処分してもらうってことっすね🐾
相続放棄が向いているケース
- 家の価値よりも借金(ローン・税金の未納)が多い
- 修繕費が高額になることが明らかな老朽物件
- 遠方で管理が現実的でない
- 他の相続人とも方針を共有できている
注意点:相続放棄は「相続を知った日から3ヶ月以内」に家庭裁判所へ申立てが必要です。期限を過ぎると原則として放棄できません。
なお、相続には「限定承認」という方法もあります。プラスの財産の範囲内で借金などを引き継ぐ手続きですが、相続人全員で行う必要があり、手続きも複雑です。迷う場合は、相続放棄だけでなく限定承認も含めて専門家に相談すると安心です。
② 維持する場合の年間コスト
年間維持費(20〜46万円)の内訳

| 費用項目 | 年間費用の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 固定資産税 | 3〜10万円 | 特定空き家に勧告されると軽減措置が外れ最大6倍になる場合も |
| 管理代行サービス | 5〜20万円 | 巡回・通水・草刈りなどを業者に依頼する場合 |
| 電気・水道 | 3〜5万円 | 完全停止せず最低限維持する場合 |
| プロパンガス基本料金 | 3〜6万円 | 使用しなくても基本料金が発生する。止め方・切り替え方は後述 |
| 浄化槽管理費 | 3〜5万円 | 下水道非整備地域の場合。法定点検あり |
年間合計:おおよそ20〜46万円が維持費の目安です。固定資産税の額・管理委託の有無・インフラの維持方法によって大きく変わります。
固定資産税に注意:建物があるうちは軽減措置あり
土地の上に建物が建っている間は「住宅用地の特例」が適用され、固定資産税の評価額が最大6分の1に軽減されます。ただし、特定空き家に認定されて行政から勧告を受けた場合は、この軽減措置が外れます。維持するなら最低限の管理は必要です。
相続登記の義務化(2024年〜)
2024年4月から、相続登記が義務化されました。不動産を相続したら、原則3年以内に名義変更の登記が必要です。正当な理由なく放置した場合、10万円以下の過料が課される可能性があります。
この義務化は、2024年4月1日より前に発生した相続で、まだ相続登記をしていない不動産も対象です。その場合は、原則として2027年3月31日までに相続登記をする必要があります。
③ 解体する場合の費用と固定資産税の注意点
解体費用の目安
| 構造 | 坪単価 | 30坪の場合 | 40坪の場合 |
|---|---|---|---|
| 木造 | 3〜5万円 | 90〜150万円 | 120〜200万円 |
| 鉄骨造 | 4〜6万円 | 120〜180万円 | 160〜240万円 |
| RC(鉄筋コンクリート)造 | 6〜8万円 | 180〜240万円 | 240〜320万円 |
解体費用は業者によって金額差が大きく、複数社に見積もりを取るのが鉄則です。地域対応の業者を一括で探せるサービスを使うと、比較が楽になります。
\ 解体費用を複数社で比較する /
解体前に「残置物」の処理が必要
家の中に家具・家電・荷物が残っている場合(いわゆる「残置物」)は、解体前に撤去が必要です。残置物の量によっては、別途50〜100万円程度の処分費用がかかります。解体費用の見積もりを取る際は、残置物処分費が含まれているか確認してください。
解体すると固定資産税が上がる

建物を解体して更地にすると「住宅用地の特例」が外れます。その結果、土地の固定資産税が約3〜6倍に跳ね上がる場合があります。

解体したら土地だけになるから、固定資産税も安くなるんじゃないの?

逆なんです。建物を壊すと住宅用地の特例が外れるので、土地の固定資産税が約3〜6倍に上がることがあります。解体は、原則として売れる見通しが立ってから検討するのが安全です。ただし、倒壊の危険や近隣トラブルがある場合は、先に解体が必要になることもあります。
自治体によっては、老朽空き家の解体費用に補助金が出る場合があります。解体を検討する前に、市区町村の空き家対策窓口で補助制度の有無を確認しておくと安心です。
あわせて読みたい:空き家の解体費用と補助金——相場・申請方法・固定資産税の注意点をまとめました
④ 売却を目指す場合
売却に必要な初期費用
| 項目 | 費用の目安 |
|---|---|
| 相続登記費用(司法書士依頼) | 5〜10万円 |
| 不動産仲介手数料 | 原則は売却価格×3%+6万円+消費税が上限。低廉な空き家等(800万円以下)は、媒介報酬の特例で最大33万円(税込)まで請求される場合あり |
| 測量費(必要な場合) | 30〜80万円 |

「特例で33万円まで請求できるようになった…」最低が33万円という訳ではない建前ですが、自分が売却した時は不動産屋さんが嬉しそうに「33万円が最低金額になっちゃったんですよ~」と言って、当たり前に請求されましたよ…【体験談】。
「空き家の3,000万円特別控除」は使えるか
一定の条件を満たした空き家を売却した場合、譲渡所得から最大3,000万円を控除できる特例があります。主な条件は次のとおりです。
- 被相続人が一人で住んでいた家であること
- 1981年(昭和56年)5月31日以前に建築された旧耐震基準の建物であること
- 耐震改修や取り壊しなど、制度上必要な要件を満たすこと
- 相続から3年が経過する年の12月31日までに売ること
この特例は制度全体の適用期限があり、現行制度では2027年12月31日までの譲渡が対象とされています。売却金額・建物の種類・耐震基準・相続人の人数などで条件が細かく変わるため、実際に使えるかは税理士や不動産会社に確認してください。
田舎の空き家はそもそも「売れない」問題がある
地方・田舎の物件は需要が少なく、売却まで数年かかるケースも珍しくありません。「いずれ売れる」と楽観視して維持費を払い続けた結果、維持費の合計が売却益を上回ってしまうことも起こり得ます。
通常の不動産仲介が難しい田舎の物件の場合、「訳あり不動産専門の買い取り業者」という選択肢もあります。相続した古い家、遠方で管理できない家、修繕が必要な家でも、買い取り査定だけなら無料で確認できます。
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売却を目指す間は、維持コストを下げる
「すぐには売れないけれど、将来的には売りたい」という方に向けて、維持コストを下げるための現実的な方法をお伝えします。

維持費のなかで見直しやすいのがプロパンガスです。空き家にしたまま契約を続けると、使用していなくても毎月基本料金が発生し続けます。
プロパンガスは「止める」か「安い会社に切り替える」か
- 止める場合:ガス会社に連絡すれば解約・供給停止は無料でできます。ただし再開時に再接続費用がかかる場合があります。
- 切り替える場合:プロパンガスは会社によって料金差が大きく、同じ使用量でも年間数万円変わることがあります。管理・訪問のついでに使う場合は、安い会社への切り替えも選択肢です。

プロパンガスの料金が「高いのか普通なのか」わからない方も多いと思います。相場の確認方法や切り替えの手順は、別の記事でくわしくお伝えしています。
あわせて読みたい:相続した田舎の家を「負動産」にしない——管理の基本とプロパンガスの見直し方
まとめ:結局、どれが正解?
- 借金や維持費の負担が重く、家に価値がない場合は「相続放棄」が現実的。ただし期限・条件・管理責任に注意
- 将来売却の可能性があれば「維持しながら売却活動」が基本の流れ
- 解体は費用が高く、固定資産税も上がる。原則として売れる見通しが立ってから検討する
- 維持する間は、固定資産税・プロパンガス・管理費を定期的に見直す
- 相続登記は2024年から義務化。過去の相続も対象で、原則2027年3月31日までに登記が必要
- 空き家3,000万円特別控除は2027年12月31日までの譲渡が対象。条件は専門家に確認を
「放棄すれば楽になる」は半分正解です。放棄できる期限・条件があること、誰も引き継がない場合は費用が発生する可能性があること——これはあらかじめ知っておいてほしいと思います。
維持するならコストを下げる工夫を。売るなら早めに動く。どちらにしても、判断は早いほど選択肢が広がります。そして法律・税務の判断は、必ず専門家に確認することをおすすめします。

