※この記事では、ケアマネジャーとして関わった事例をもとにした話が出てきます。個人が特定されないよう、年齢・性別・金額など一部情報を変えてお伝えしています。
「民間の医療保険、本当に必要ですか?」
ケアマネジャーとして利用者さんの生活費を一緒に考える中で、何度もこの疑問を持ちました。
印象に残っているのは、こんなケースです。年金が月6.5万円の女性(要介護)が、民間の医療保険に毎月1万円を払い続けていました。女性が繰り返し入院するたびに、ご主人が保険を請求しようとするのですが、手続きが複雑で書類を揃えるだけで疲弊してしまう。保険料を払うことで、女性の実質の収入は月5.5万円で生活費を賄わなければならない。そこまでして入っている保険が、本当に必要なのか。そう思わずにはいられませんでした。
この記事では、医療保険が「いらない」と言われる理由、特に高齢になるほど必要性が下がる仕組みを、公的制度の話を中心に正直にまとめます。ただし全員に不要とは言いません。向く人・向かない人を整理したうえで、ご自分の医療保険について考えるための判断材料を提供します。

「民間の医療保険に入っていないと不安!」って思いがちっすけど、日本の公的保険、実はかなり手厚いっす🐾 まずそっちを知るのが大事っすよ!
そもそも日本の公的保険は手厚い——高額療養費制度を知っていますか
民間の医療保険の話をする前に、まず日本の公的保険の仕組みを確認しておきましょう。ここを知っているかどうかで、民間保険の必要性の評価が大きく変わります。
高額療養費制度——1か月の医療費に「上限」がある
日本には「高額療養費制度」があります。同じ月に同じ医療機関で支払った医療費が一定額を超えると、超えた分が後から戻ってくる仕組みです。
特に重要なのが、70歳以上の自己負担上限額です。
| 所得区分 | 1か月の自己負担上限額(外来+入院) |
|---|---|
| 一般(年収約370万円未満) | 57,600円 |
| 住民税非課税世帯(低所得Ⅱ) | 24,600円 |
| 住民税非課税世帯(低所得Ⅰ) | 15,000円 |
年金が月6.5万円という方は、夫の年金(収入)に課税がされてなければ、住民税非課税世帯に該当するため、1か月の医療費の自己負担は最大でも24,600円、場合によっては15,000円で上限がかかります。

夫の年金額が多かったり、働いて住民税を課税されているご家族と世帯を同じくする場合、ご本人の年金額が多くなくても、課税世帯の区分となりますので、注意が必要です。
限度額適用認定証——窓口での支払い自体を抑える
高額療養費制度は「後から戻ってくる」仕組みですが、「限度額適用認定証」を使えば窓口での支払い自体を上限額に抑えられます。事前に市区町村の窓口(または加入している健康保険の窓口)で申請できます。
入院が決まったら、まずこの手続きをするだけで、窓口で何十万円も払う必要がなくなります。これを知らずに民間保険で補填しようとしている方が、現場では少なくありませんでした。

ケアマネとして関わっていると、高額療養費制度や限度額認定証を知らないまま、民間保険の給付金をあてにして入院費を賄おうとして民間保険に加入しているご家庭が少なくなかったです。
公的制度を正確に知ったうえで、民間保険の必要性を考えるのが正しい順番です。
医療保険が「いらない」と言われる理由——特に高齢者は再検討を
公的保険の仕組みを踏まえたうえで、民間の医療保険が「いらない」と言われる理由を整理します。
75歳を過ぎたら医療保険はいらない?
75歳以上になると後期高齢者医療制度に移行し、医療費の窓口負担は原則1割(所得によっては2割・3割)になります。高額療養費制度も引き続き使えます。
このため、75歳を超えてから民間の医療保険に新規で加入するコスト対効果は、多くの場合で薄くなります。保険料自体が高齢になるほど高くなる一方、公的保険でカバーできる範囲は広い(高額療養費の限度額も下がることが多い)からです。
若いうちに加入した終身医療保険を「払い済み」にして保険料の支払いを止める選択肢もあります。保険会社に相談すると、保障額は下がりますが以降の保険料支払いが不要になる場合があります。
年金が少ない場合、保険料自体が家計を圧迫する
冒頭の話に戻ります。年金が月6.5万円で、そこから医療保険に毎月1万円を払い続けていたとしたら、手元に残るのは5.5万円です。
一方で前述の通り、高額療養費制度を使えば、1か月の医療費の自己負担は最大でも2〜3万円台で収まります。年間で払っている保険料12万円と比べたとき、果たして割に合っているのか——この問いは、正直に立てる必要があると思います。

入院中の差額ベッド代、食費、入院着、洗濯等の料金は高額医療費の枠に含まれないので、その他の必要経費として留意する必要はあります。
ちなみに収入によっては、食費も減免される制度もあります。
先進医療保険は必要か
「先進医療は高額だから備えが必要」という話をよく聞きます。ただし先進医療は、実際に使われる頻度が極めて低いです。多くの医療は公的保険の範囲内で受けられるため、先進医療専用の保険料を払い続けることの費用対効果は、検討する価値があります。

「何かあったときのために」という安心感に対して、毎月の保険料が見合っているかどうか——冷静に数字で見るっす🐾
それでも医療保険が「いる人」もいる——向く人・向かない人
「医療保険は全員いらない」とは言いません。向く場合と向かない場合があります。
医療保険を見直す・解約を検討していい人
- 貯蓄が十分にあり、いざとなれば自己負担できる
- 高額療養費制度・限度額認定証の使い方を理解している
- 75歳以上で、後期高齢者医療制度に移行済み
- 年金が少なく、保険料が家計を圧迫している(その日の生活がくるしい)
医療保険を続ける・新たに検討してもいい人
- 入院時の差額ベッド代・食事代など、保険適用外の費用が心配
- 自営業・フリーランスで傷病手当金がなく、働けない期間の収入減が不安
- 家族が入退院や医療が絶対必要で、医療費がかさばる可能性が非常に高い
- 保険料が安く、精神的な安心感として割り切って持ち続けている

「保険は不要」と断言するつもりはありません。ただ、公的制度でどこまでカバーされるかを把握しないまま、漫然と払い続けるのは得策ではないと思っています。
ケアマネとして伝えたい——見直しの順番と相談先
まず公的制度を把握する
見直しの第一歩は、民間保険の解約・変更ではありません。まず「高額療養費制度でいくらまで自己負担になるか」「限度額適用認定証の申請方法」を確認することです。お住まいの市区町村の窓口や、加入している健康保険の問い合わせ先で教えてもらえます。

いざ!という時に慌てないためにも、自分や家族が元気なうちにしっかり調べておいて、必要になるお金に関しては把握しておきましょう。
保険証券を手元に出して内容を確認する
いま入っている保険が「何のための保険か」を確認してください。入院日額・手術給付・先進医療特約など、何に対してお金が出るのか。保険料に対して必要な保障がついているかを見直す機会になります。

「なんとなく不安だから」「みんなが入ってものだから」という理由で民間保険に入り続けることに疑問を持つことも大事ですね。
判断に迷ったらFP・保険相談窓口へ
「解約すべきか」「払い済みにすべきか」の相談は、ファイナンシャルプランナーや保険相談窓口に聞くのが確実です。特定の商品を売らない中立の相談窓口(無料相談ではなく、きちんとした有料のFPや、病院の医療相談員等)を選ぶと、偏りなくアドバイスをもらえます。
この記事はあくまで「考えるきっかけ」です。具体的な解約・変更の判断は、ご自身が信頼できる専門家に相談してください。
老後のお金の備えとして、自宅を活用する「リバースモーゲージ」「リースバック」も選択肢のひとつです。ただし向く人・向かない人がはっきり分かれる制度です。👉 リバースモーゲージとリースバックの違いは?ケアマネが解説
まとめ——公的保険を知ってから、民間保険を判断する
- 日本には高額療養費制度があり、1か月の医療費自己負担に上限がある
- 限度額適用認定証を使えば、窓口での支払い自体を上限額に抑えられる
- 年金が少ない高齢者が毎月1万円の保険料を払い続けることは、家計への負担が大きい
- 75歳以上・貯蓄がある・公的制度を把握している人は、民間保険を見直す余地がある
- 最終判断はご自身で行い、判断材料は専門家(FP・保険相談窓口)へ

ずっと前に入った保険を放っておかず、見直してみることも大事っす🐾契約内容(支払いや補償額等)を出して、本当に必要な保険かどうか確認してみるっす!
あわせて読みたい:終活は何から始める?ケアマネが教える進め方と優先順位

